ソーシャルレンディング撤退を決意させた、4つの深刻な問題点

これまで、ソーシャルレンディングに対して延べ1000万円近くを投資してきました。しかし、みんなのクレジットやラッキーバンクでの事故を経験し、ソーシャルレンディングについて改めてリスクリターンを精査した結果、「ソーシャルレンディングは、行うべきではない」という結論に至りました。

出資に対するリスクに対して、リターンがあまりにも小さすぎるということです。

では、なぜこのような結論に至ったのかについて、問題をいくつかに分類しながら書いていこうと思います。

ソーシャルレンディングにおける問題点

(1)情報開示における問題点

まず第一に、ソーシャルレンディングにおいては借り手が開示されていません。これについては、金融庁(?)からの指導によるものであり、借り手が分からないという事自体は事業者に非はありません。

しかしこのルールだと、「実は、企業Aだけに行っていました」という事態が発生してしまいます。資金を分散投資していたつもりが、実は全ての資金が企業Aに融資されていた、という事も可能になってしまうのです。

みんなのクレジットにおいても、貸付金全体の約98%が旧・ブルーウォールジャパンへ貸付られていたという事が事件後に分かりました。これは現在も運営しているその他のソーシャルレンディング企業でも起こっていて、例えばラッキーバンクやグリーンインフラレンディングなどは、グループ会社と思われる企業へ投資資金が集中しています。

前述の通り、現状の法制度では全く違法ではありませんが、正直健全な状態だとは思えません。

また、借り手が開示されていないという問題は、別の根本的な問題にもつながります。それは、「借り手が分からないと、企業の信用力や融資案件の妥当性を全く行えない」という問題です。

当然の疑問として、借り手の企業やプロジェクト・案件についてよく分からずに、どうやって資金を出す事が出来るのでしょうか? ソーシャルレンディングに出資するに当たって、判断する材料があまりにも少なすぎるのではないでしょうか?

そもそも、金融機関での融資に関しては、基本的な信用力調査→債務者判断→案件判断というプロセスで進んでいきます。

企業の信用判断に当たっては、業種業態の特等や商流の把握に始まり、同業他社との比べた場合の強み弱み、決算書の時系列比較等を詳細に分析する必要があります。また、そうした定量的な分析を補足する為に、企業の代表者に直接会い、定性面の判断も行います。現地調査を行ったりもします。尚。中小企業の決算書はかなりの確率で(意図するせざるを問わず)粉飾されているので、それらを考慮した上で信用力を判断する目利きが必要となります。

そして、その上で案件判断を行います。借入期間、資金使途、返済方法、担保保証の把握に加えて、事業計画の妥当性(蓋然性と言ったりします)を検証したり、どの程度のストレスまで耐えられるか、案件頓挫時には何かの方法で資金回収できるのか、等を精緻に検証する必要があります。

しかし、これらの検証を綿密に行っても、ダメになる案件は多々存在します。決算書を複数期もらい、ヒアリングも行い、資金使途もリサーチし、借入金額の妥当性を検証しても一定率で倒産するのです。

そのように考えると、ソーシャルレンディングのホームページに載っている程度の情報で、投資判断を行うことなど不可能です。 融資を専業で行っているプロですらミスしているのに、素人がプロよりも少ない情報で正しく判断することなどできません。

企業を特定できないようになっている訳ですので、正直何の判断の材料にもならないような情報しか掲載されていませんが、これに基づいて、サイコロやフィーリングによってギャンブルを行っている事と相違ありません。

(2)借り手の信用力の問題点

ソーシャルレンディングにおける借り手の信用力は、金融機関が融資を行えないレベルの悪さと言わざるをえません。

例えば、maneoの案件では年利5.0%程度が平均です。クラウドリースに関しては、年利10.0%という案件も多々存在します。という事は、借り手はこの金利にmaneoなどのフィーを上乗せしたレートで借り入れを行っていることになり、最低でも7%程度で借りていることになります。クラウドリースでの借り手は、最低で年12%程度という事になります。

しかし2018年現在、企業の平均的な借入レートは年利1%台です。信用力の低い中小企業の場合でも、信用保証協会という政府系組織の保証制度を利用して借入を行うことができるので、その保証コストを追加で考慮してもせいぜい年利3%程度です。

つまり、ソーシャルレンディング経由で資金を調達している企業というのは、そうした王道的な融資を受けられないような信用力ということです。もし、信用保証協会などを活用できるのであれば、圧倒的にそちらの方がコストが低いのですから、高利なソーシャルレンディングを利用する必要はないのです。

個人的には、年利7%以上の融資しか受けられない企業の信用力というのは、全く想像が付かないレベルです。破綻寸前の企業が、短期的な延命の為に資金調達を行い、自転車操業を行っているとしか感じられないようなレートです。

また案件によっては、都内の一等地に不動産を所有している企業が、その担保の範囲内で年利10%で期間2年程度の借入を行っていたりします。しかし例えば、上場企業であるアサックスという不動産担保ローン専門業者などを活用すれば、ソーシャルレンディングのレートの半分以下で資金調達を行うことができます。

私には、どうしてソーシャルレンディングを利用しているのか、理由が分かりません。もしかすると、定性面の理由から金融機関を活用できない等(過去に信用事故を起こしているなど)の特殊事情があるのかもしれません。

何れにしても、カネ余りで低金利な現代において、年8%以上でないと資金調達が行えないという企業に対して、融資の素人が手を出すべきではありません。

(3)分別管理が出来ていないという問題点

ソーシャルレンディングにおいては、分別管理という点においても深刻な問題があると思っています。

投資信託などの場合には、運営者の財布と投資家から集めたお金は分別管理する事が法的に義務とされていて、信託機関にて別管理されています。また、プロジェクトAの資金とプロジェクトBの資金も、それぞれが混ざらないように分別管理されています。

しかし一方、ソーシャルレンディングにおいてはそうでない可能性が非常に高いです。例えば、みんなのクレジットのケースでは、償還を迎えたファンドAの返済資金に新規案件Bの返済が当たっているという事がありました。これは、典型的なポンジスキームであり、分別管理が全くなされていない事を意味しています。

全てのソーシャルレンディング会社が悪い事をしているとは全く思っておりませんが、出資金が運営会社の運転資金や利息補填資金になっている可能性は否定できません。また、それを事前に把握する事は非常に困難であり、「エイ、ヤー」で投機するしかないのです。

そして分別管理が不徹底であるとすれば、運営者の倒産は投資分の毀損に直結する事になります。仮に運営者が倒産してしまった場合でも、本来は投資資金には何の影響もない訳ですが、ソーシャルレンディングにおいてはそうではないのです。

(4)その他の問題点

その他の構造的な問題点として、ソーシャルレンディングは「レモン」の市場であり、信用力の低い借り手だけが残っていきやすいという問題があります(レモンというのは、経済学の用語です)。

例えば、信用力の高い企業と信用力の低い企業がいたとします。いずれの企業も、少しでも安い金利で借りる為に、財務内容等をよく見せようとします。運営者や貸し手は簡単にはそれを見抜くこと出来ないので、両社の平均的なレートをどちらにも提示します。例えば、信用力の高い企業には1%、信用力の低い企業には5%で貸したいけれども、どの会社が良くてどの会社が悪いか分からないので、間を取って全企業に3%で貸すようなイメージです。

しかし、平均的なレートというのは、信用力の高い企業にとっては金利が高すぎます。逆に、信用力の低い企業にとっては、非常に安いレートで資金調達できます。

すると、信用力の高い企業は資金を借りなくなり、信用力の低い企業だけが増えていくことになるのです。結果、3%では割に合わなくなった貸し手が金利を3%以上へ変更することになります。そして、これを繰り返していくことで、どんどん金利が上がっていくと共に、信用力の低い企業だけが増えていくことになるのです。

こうした現象は、貸し手と借り手の間に、情報量の格差(情報の非対称性)が存在する市場では非常に大きな問題となるのです。ソーシャルレンディングにおいても、そのビジネスモデルが内包する大きな問題点と言えます。

他にも、ソーシャルレンディングの事業者には決算書の開示義務がないという問題もあります。

決算が開示されていれば、それは一つの投資判断材料になる訳ですが、投資家はその運営企業が倒産するまで財務内容が分かりません。もしかすると、金融庁などが財務内容をチェックしているかもしれませんが、社長やその一族への私的流用などは防げていないのが現状であり、財務内容のチェックなどにおいても、あまり期待できるものではないと思います。

ソーシャルレンディングに対するリスクリターンの考察

以上が、ソーシャルレンディングが抱えるリスクです。まあ、リターンと表裏一体の関係であるので、リスクが存在すること自体は問題ではありません。

しかし、ソーシャルレンディングにおいては、リターンに対してあまりにもリスクが大きいと言わざるを得ません。超ハイリスク・ミドルリターンというイメージです。超ハイリスクに対しては、超ハイリターンでなければ、割に合いません。借り手や事業者の倒産によって、資金回収が殆ど出来なくなる可能性があるにもかかわらず、リターンは少し高めの金利収入に限定されており、非常にバランスが悪いです。

それだけのリスクを負うのであれば、仮想通貨のように数倍〜数十倍というリターンの可能性がないと、割に合いません。ですので結論としては、「ソーシャルレンディングは行うべきではない」ということになります。

もちろん、この記事の内容は一個人の私見に過ぎませんが、もしこれからソーシャルレンディング参入を検討されているのであれば、上記の内容は絶対に頭に考えておくべき内容だと思います。高利回りにつられて、安易にソーシャルレンディングに投資した結果、100万円以上のお金を損した私のような人間もおりますので、投資すべきか否かはご自身で十分に検討して下さいね。